2 視覚障害について

2−1 視覚障害とは

視覚障害とは、視力や視野、色覚などの視機能が十分でないために、全く見えなかったり、見えにくかったりする状態をいいます。一般に両眼の矯正視力が0.3未満になると、黒板に書かれた文字や教科書の文字などを見るのに支障をきたします。さらに、学習の場面で主として視覚を用いることが可能かどうかで、全盲と弱視とに分けられます(たとえ裸眼視力が0.01以下であっても、眼鏡等での矯正視力が1.0以上見える目は弱視とは言いません)。視覚障害のうち、教育的な立場から特に問題になるのは視力の障害ですが、視野や色覚等に高度の障害がある場合も教育的配慮が必要です。

視覚障害は、情報の障害であり、行動上、さまざまな制約を受けます。視覚障害における「3大不自由」として、次のものが挙げられます。

  • 安全に能率よく移動すること(歩行)
  • 日常生活上の種々の動作(食事、衣服の着脱、整理整とん 等)をスムーズに行うこと  (日常生活動作)
  • 普通文字(墨字)や図や絵などの内容を理解すること(文字処理)

これらの不自由は、不可能を意味するのではありません。


視覚障害は、教育、医学、福祉などの立場によって定義が異なりますが、盲と弱視に大きく分類されます。教育的な観点では、教育活動で用いる学習手段から、次のように分類しています。

盲 児
点字を使用し、主として聴覚や触覚を活用した学習を行う必要のある者
弱視児
矯正視力が0.3未満の者のうち、普通の文字を活用するなど、主として視覚による学習が可能な者
Q&A 盲児と弱視児について詳しく知りたい・・・

日本の視覚障害者は約30万人といわれています。そのうち全盲の人は約10万人で、残りの人たちは、ロービジョン(教育的弱視あるいは福祉的弱視)と呼ばれています。盲児と弱視児は、次のように定義されます。

盲児
 視覚による教育が不可能または著しく困難で、点字を常用し、主として触覚や聴覚を活用した学習を行う必要があるもの。全盲(光を全く感じない)の他に、明暗弁(光を感じ、明暗が分かる)、手動弁(眼前で手が動いているかどうかが分かる)、指数弁(至近距離で指の本数が分かる)が含まれます。
弱視児
 視力が0.3未満のもののうち、普通文字を活用するなど主として視覚による学習が可能な者で、その見え方は千差万別です。0.1未満を強度弱視、0.1以上0.3未満の者を軽度弱視といいます。同じ視覚障害児とは言っても、盲児と弱視児の指導の在り方は大きく異なります。

2−2 視覚障害の状態

視覚認識に影響を及ぼす見えにくさの主な状況は次のとおりです。多くの弱視児は、見えにくさの要因を複数抱えており、見え方の個人差を大きくしています。


Image1 健常者の見え方
Image2 ピンボケ状態:ピントが合っていない
Image3 振とう状態:眼球が不随意的に動く
Image4 光源不足状態:薄暗いところで見えにくい状態
Image5 透光体混濁状態:すりガラス越しに見るような状態
Image6 視野の制限T:部分的な像で形状を認識する
Image7 視野の制限U:中心部の機能が低下している


2−3 主な疾病とその配慮点

病気によって異なる、さまざまな見え方について説明します。また、一般的に言われている配慮点を簡単にまとめました。医療機関での定期的な受診や経過観察が必要な疾患もあり、医 師との連携を密に図りながらその指導に当たる必要があります。

網膜色素変性症

白内障

緑内障

糖尿病性網膜症

  • 網膜の視細胞が壊れていく病気。幼児期の夜盲に始まり、次第に視野が狭くなる。
  • 見える部分の視力は比較的よい場合がある。
  • 本来透明であるべき水晶体が濁ってしまう症状。
  • くもりガラスを通したようにかすんで見えたり、まぶしく感じる場合がある。
  • 眼圧が上昇したために視神経が侵されていく病気。
  • 周辺の視野が徐々に失われ、失明することもある。
  • 糖尿病による動脈硬化が進むと細い血管がふさがり、酸素の供給が困難になる。そのため、眼球内で出血などの障害が起きてくる。
  • 中心視力が低い場合は拡大読書器、まぶしさには遮光眼鏡などを使用する。
  • 照明、コントラストの良い教材の準備や、まぶしさへ配慮する。
  • 網膜剥離予防(打撲など)、眼圧上昇予防(長時間のうつむきや過度の興奮)
  • 日常生活の指導を重点に眼科管理が必要となる。
  • 未熟児網膜症

    黄斑変性症

    視神経萎縮

    網膜芽細胞腫

  • 未熟児で生まれた新生児は、網膜の血管が十分でないため、網膜が酸素を要求すると血管が異常に広がり、繊維が増殖する。
  • 黄斑部(網膜で視細胞が集まる部分)が変性し、見ようとする場所の中心部が見えにくくなる。
  • 視野の一部がくもったり、消失したりする。幼児からの場合は、横目の状態で見る人が多く、外斜視や眼球振とうを伴うこともある。
  • 眼の網膜にできるがんで、多くが3歳以内に発症する。結膜の充血、視力の低下や、緑内障を起こし眼を痛がることもある。
  • 網膜剥離の予防(打撲など)や、見やすい文字サイズといった環境整備をする。
  • 太線を使ったり色分けをしたりして、細かい部分が見えやすい教材を準備する。
  • まぶしさへは遮光眼鏡、同系色の図等は鮮明な境界線を挿入する。
  • 点字の学習、空間概念の学習、日常生活動作の学習等で対応する。